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会計処理とは? 仕訳について、企業会計原則や会計処理の具体例を解説

会計処理とはお金の出入りを記録すること、つまり仕訳を行うことを指します。

この記事では、会計処理とは何か、どのように行うのか、処理を行うにあたって重要なことなど、具体的な内容を解説します。

 

会計処理とは

「会計処理」とは、企業において発生した様々な取引の記録を意味します。

つまり、お金の出入りがあったときに、何に対していくら使ったのか、何に対していくら入ってきたのかを帳簿に記録することを指します。

 

ここでいう記録とは「仕訳」のことです。そして仕訳とは、借方・貸方という概念のもと、勘定科目を使って記録することを言います。

 

例えば、「文房具10,000円を現金で購入した」という取引の場合、下のような記録を行います。

 

借方 消耗品費 10,000円 / 貸方 現金 10,000

 

これが仕訳と呼ばれる処理です。

この例では、文房具の購入について「消耗品費」という勘定科目を使用しましたが、取引の内容によって使う勘定科目は異なります。

 

主にお金が出ていったときに使う「費用」の代表的な勘定科目はこちらです。

 

  • 消耗品費
  • 旅費交通費
  • 水道光熱費
  • 福利厚生費
  • 交際費
  • 通信費
  • 広告宣伝費
  • 租税公課
  • 支払利息
  • 雑費

 

これに対して、主にお金が入ってきたときに使う「収益」の代表的な勘定科目がこちらです。

 

  • 売上高
  • 受取利息
  • 雑収入

 

これらの勘定科目を使い、日々の取引の仕訳を進めていくのが会計処理です。

 

「会計処理」と似たワードに「経理処理」があります。

混合されやすく、実務にあたる人でも同じ意味で使ってしまうことがあります。ただし厳密には、経理処理は、現預金の管理や支払作業、請求書の発行など、記録だけでなくお金に関わる業務全般を指します。つまり、会計処理と完全にイコールの関係に立つわけではなく、経理処理の一部に会計処理が当たると言えるでしょう。

 

管理会計と財務会計に分けられる

会計処理は、行う目的によって「管理会計」と「財務会計」の2つに分けることができます。

 

管理会計は、「会社内部で管理することを目的に行われるもの」です。

内部管理が目的のため、管理方法や形式、法律やルールなどは特に定められておらず、社内で自由に管理します。一般的には、予算管理や原価計算、資金繰り管理などが行われます。

これらを行うことで、部門ごとの業績や会社全体の経営状態が明確化され、経営層が今後の経営方針や経営戦略を立てやすくなります。

管理する期間についても特に決められておらず、会社によって異なり、月ごとや四半期ごと、年度ごとなど様々です。ただし、より適格な経営戦略を立てるためには経営状態をリアルタイムで知ることが必要不可欠です。そこで月ごとに月次決算という形で管理する会社が多いです。

 

他方、財務会計は、「会社外部に経営状態や経営実績を報告する目的で行われるもの」です。

作成した資料を税務署に提出し、株主や投資家、債権者、取引先などの利害関係者へ開示します。そのため管理会計とは異なりルールや作成するフォーマットが定められています。一定の基準に従い財政状態を表す貸借対照表と経営成績を表す損益計算書を作成するのです。

利害関係者はこれらの情報を参考にし、投資を増やすのかもしくは現状に留めるのか追加融資するのか、もしくは返済を要求するのか、といった判断をすることになります。

 

企業会計原則

会計処理は一定のルールに従って行います。そこで重要となるのが「企業会計原則」で、その中でも「一般原則」と呼ばれている7つの原則は仕訳を行う上で大前提となるルールです。処理にあたってはこれらをしっかりと押さえている必要があります。

 

真実性の原則

「真実性の原則」とは、当然ではありますが、報告する内容に嘘があってはならないということを表しています。仕訳や財務諸表の作成は、不正や利益操作を行わずに真実を報告する必要があります。

 

正規の簿記の原則

「正規の簿記」とはいわゆる複式簿記のことです。全ての取引について記録すること(網羅性)、客観的な証拠によって記録すること(検証可能性)、そして秩序をもって記録すること(秩序性)の3つが重要とされています。

これらを遵守して日々の処理を正確に行い、正確な帳簿を作成することが求められます。

 

資本取引・損益取引区分の原則

「資本取引」とは、資本を増加または減少させる取引、つまり株式の発行や配当などを指します。これに対して「損益取引」とは、収益や費用が発生する取引、つまり売上や費用の発生を指します。これらは、明確に区別して処理を行う必要があります。

 

また、「資本剰余金」は株主から払い込まれた元手であり「利益剰余金」は営業活動によって獲得した利益を表しますが、これらを特に混同しないことを求めています。両者を混同してしまうと資本としていくら維持しておけば良いのか、いくら配当に回して良いのかが不明瞭になってしまうからです。

つまりこの原則は、維持しておくべき資本と配当できる利益を明確に区別しておくために定められているのです。

 

明瞭性の原則

「明瞭性の原則」では、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表につき正確な内容であることのみでなく、利害関係者が見たときにわかりやすく作成されなければならないということを表しています。

 

具体的には、重要な会計方針を示すこと、例えば固定資産の減価償却方法や有価証券の評価方法などを注記として開示することを求めています。

また、企業合併や譲渡、火災による損害など、発生した翌年度以降に影響すると考えられる事象についても開示する必要があります。

 

継続性の原則

「継続性の原則」とは、決定した会計方針を継続して使わなければならないということを表します。例えば固定資産の償却方法については定額法と定率法のどちらかを選択できるのですが、一度決定したら基本的に変更することは認められません。もし、例年は定額法で処理していたにも関わらずその年度のみ定率法で処理するようなことがあれば、多く費用が計上されることになり利益操作と考えられてしまいます。

 

また、継続的に処理を行わなければ前年または翌年の経営状態と比較することができません。正確な期間比較を可能にするため継続性が求められるとも言えます。

 

保守主義の原則

「保守主義の原則」によると、健全な会計処理とは、プラスの項目は慎重かつ少なめに、マイナスの項目は早めかつ多めに見積もって処理することを指します。

例えば売掛金が回収できない可能性が高いと判断した場合に、貸倒引当金を多く計上することなどが挙げられます。

 

単一性の原則

1つの会計年度にかかる財務報告に関して、目的や提出先の違いにより異なる形式の財務諸表を作成することがあります。このとき形式は違っていても内容は一致している必要があります。このことを「単一性の原則」と言います。

例えば税務署へ提出する書類と株主総会で開示する書類とでは形式が異なるところ、ここで内容や計算方法も変えることは認められません。

 

時系列で見る会計処理

実際に会計処理がどのように行われるのか、時系列で「日常的な処理」「月次処理」「期末処理」の3つに分けて見ていきましょう。

 

日常的な処理

日々発生する様々な取引に関しては、その都度仕訳を行います。

メインとなるのは「売上高」「経費」の仕訳です。この他、「未払金」や「立替金」の仕訳などが発生することもあります。

 

取引数、つまり仕訳数は企業規模や業種によって異なります。中小企業だと1名で全ての会計処理を担うこともありますし、大きな会社だと数十名が経理部門の担当者として配置されていることも珍しくありません。

大規模な会社であるほど取引件数が多くなるため、数日だけで膨大な作業量がたまってしまいます。そのため、日々の仕訳は取引が発生する度にコツコツと処理していくことがポイントとなります。

 

月次処理

日常的に行う処理の他に、月ごとに行う会計処理もあります。

請求書の発行は月末締めで行うのが一般的ですし、給与も月に一度支払われるのが通常です。そこで「売上金」と「給与」の計上が主な月次処理となります。

 

そして月次処理を終えれば月次決算資料を作成します。これは各部門のトップや経営層に開示され、今後の戦略を立てたり業務を改善したりするための資料として使われます。

また、月次決算のタイミングの他に、四半期・上半期・下半期などの時期に行う会社もあります。

 

期末処理

期末の処理は、日常的な処理や月次処理と比べても大きな労力を要するものです。

日常業務と同時進行することにもなりますし、決算日から2ヶ月以内に決算書を提出しなければならないという決まりもありますので、経理部門は1年のうち決算期前後がもっとも忙しい時期となります。

 

具体的な処理内容としては経過勘定があります。経過勘定とは、前払費用や前受収益、未払費用、未収収益などのことです。

企業では一般的に発生主義を採用しているため、現金を支払ったタイミングではなく、取引が発生したタイミングで収益および費用を計上します。そうなると「まだ現金を支払っていないけど費用が発生した」「現金を受け取ってないけど売上が発生した」といったことが起こります。このとき使用するのが経過勘定です。これらを使った仕訳により、年度を跨いで発生する収益および費用について、適切な会計期間での計上が可能になります。

 

また、減価償却費の計上も期末に行います。これは車や建物、備品などの固定資産について、それぞれの耐用年数で償却、つまり費用として計上していく処理を指します。

 

これら全ての作業を終えれば貸借対照表や損益計算書などを作成し、税務署へ提出します。こうして1年の会計処理のすべてが終了します。

 

以上、会計処理について解説しました。日々の処理が積み重なって、月次決算書・期末決算書が完成します。そのため日頃から丁寧に、正確な記録を行うことが会計処理において最も重要なことと言えるでしょう。

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資格者紹介

Staff

森下敦史税理士
税理士 森下 敦史 もりした あつし

父親が会社経営をしていて、子どもの頃から将来は自分で起業し、自分の思うような人生を自分で切り拓いて生きていきたい、と考えていました。

父親の背中をずっと見てきましたので、経営者の思いや悩み、苦労などにも傍で触れることができました。

そして大学時代に出会った税理士という資格は、中小企業の最も身近なパートナーであることに非常に魅力を感じ、税理士を目指そうと決意しました。
大学卒業後、仕事をしながらの受験生活は長丁場となりましたが、無事に税理士試験に合格。

実際に自分が税理士として仕事をしていて感じることは、税理士の仕事はとてもやり甲斐があり、責任も重大であるということです。

ただし、税理士の使命は「正しい経理処理や税金計算をして、間違いのない申告書を作る」だけではありません。

専門家としての事務的なサービスにとどまらず、経営者が誰にも言えないような悩みを抱えた時に、真っ先に弊所のことを思い出して頂き、気兼ねなくご相談できるように心掛けています。
そして、経営者の思いに本気で応え、共に問題解決をしていきます。

そのため、経営者とのコミュニケーションを積み重ねにより、本物の信頼関係を構築することは重要です。
さらに「スピード対応」を常に心掛け、経営者が事業に専念できるよう、万全のサポートをさせて頂きます。

  • 所属団体
    東京税理士会
  • 著書
    あさ出版「中小企業の資金調達方法がわかる本」(共著)
  • 経歴

    大学を卒業後、3年間の受験専念期間を経て、一般企業に営業職として入社。

    その後、会計事務所に入所し、キャリアを積む。

    2011年、税理士試験合格。翌2012年、税理士登録。

    「より主体的に、責任を持って業務に取り組んでいきたい」と考え、2013年独立。

    森下税理士事務所を開設する。

事務所概要

Office Overview

事務所名 森下敦史税理士事務所
代表者 森下敦史(もりした あつし) [ 税理士番号:121051 ]
所在地 〒104-0045 東京都中央区築地7-2-1 THE TERRACE TSUKIJI 5階EAST
TEL/FAX TEL:03-6226-9566 / FAX:03-6226-9567
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