会社設立時に必要な定款とは?~作成方法や注意点を解説~
就業規則であれば、従業員一般が目にする機会のあるものですし、比較的馴染みもあるでしょう。しかし、「定款」についてはよく理解していない方も多いのではないでしょうか。就業規則と近い性質を持つ一方で、その存在意義や作成目的は異なるものです。定款のほうが会社経営においてはより重要な存在であり、これを理解していることが大切です。
そこでこの記事では「定款とは何なのか」を簡単に説明した上で、株式会社と合同会社、それぞれを設立する時における定款作成の流れや方法、注意点などを解説していきます。
定款とは
定款については、よく「会社の憲法」などと表現されます。
憲法は法律と同じく一定の規律となるものですが、法律よりも憲法の方が上位に位置する法です。
定款に関してもこれと同じことが言え、就業規則やその他社内規則などと同じように、ある種会社のルールや規律をまとめたものではあるものの、それらを同列に扱うことは適切ではありません。定款は会社の根本原則に該当し、会社の種類や存在そのものに影響を与えるものだからです。
そのため会社を設立する際、社内規定の作成までは求められませんが、定款の作成は法律で義務とされており、欠かせません。しかも、起業者がどこまでも自由に作成できるものではなく、法律による一定の制限がかかっています。例えば記載すべき事項に一部指定がありますし、各種項目につき制約がかかっていることもあります。
例えば、必ず記載しなければならない事柄として「絶対的記載事項」があります。会社の運営上、欠かすことができず、絶対的記載事項に抜けがあると定款全体が無効になってしまいます。
一方で「相対的記載事項」という項目もあります。定款成立に必須ではないものの、所定の効力を有効にするには定款への記載が欠かせないという事項が相対的記載事項にあたります。会社財産への影響が大きい変態設立事項などがここに含まれます。
その他の項目は「任意的記載事項」で、任意に定款へ記載する事柄が該当します。明文化による事実上の効果を得るのが大きな目的です。
なお、いずれの記載事項も法律による強行規定、公序良俗に反する内容は定款に記載したからといって有効になるわけではありません。
定款の重要性
定款の重要性は、“会社の自治が守られる”というところにあります。
定款で定めたことに対して、たとえ代表取締役であっても背くことはできません。
また、その内容を簡単に変えることもできません。そのため、ここに記載したことについては、一定の信頼を置くことができるのです。
こうした性質を持つことから、取引において、定款の提出を求められる場面もあります。 例えば行政庁に対してある事業に関する許認可申請をする場合や金融機関から融資を受ける場合、登記手続きをする場合など、重要な取引等の場面でその機会がやってきます。
ただ、相手方としては定款の提出を求めるほど重要な取引であると認識していますので、提出された定款(のコピー)が本物であること、定款のコピーと原本が相違ないことの確認をしたいと考えます。
そこで必要になるのが「原本証明」です。会社には法律上、定款の保存義務が課せられていますし、これを渡してしまうわけにはいきません。そこで提出書類として定款が求められているときには、定款のコピーに原本証明を付して提出します。原本証明が必要である旨明記されていない場合でも、定款の提出を求められている場面では相手方にその必要の有無を確認したほうが良いでしょう。
株式会社設立時の定款作成の流れ
会社として最もメジャーな種類が「株式会社」です。以下で、株式会社設立時における定款作成の流れを見ていきます。
株式会社設立の大まかな流れ
1. 発起人(起業者・創業者)を決める
会社設立の手続きを担う人が発起人(法人も可)
2. 会社の基本事項を決める
目的・商号・事業内容・本店所在地・資本金額・持株比率・役員・決算期などを決定
3. 定款を作成する
4. 定款の認証を受ける
株式会社の場合、公証人による定款の認証を受ける必要がある
この手続きで、法令上の問題の有無等がチェックされる
なお、認証手数料5万円、紙の定款なら4万円の収入印紙が必要
定款の作成から認証手続きまで、専門家に依頼することがあるが、その場合には委任状を準備する
5. 印章を注文する
設立登記で会社の印鑑を届け出ることになるため、社名決定後、代表者実印や銀行印、角印などを作る
6. 出資金の払い込み
発起人は、引き受けた株式に応じた金額を金融機関に払い込む
7. 設立登記申請 法務局にて登記の申請
株式会社の定款で必ず記載する項目
株式会社を設立するのか、後述の合同会社を設立するのかの違いによって、定款に記載すべき項目も変わってきます。
株式会社の場合には下表の内容を少なくとも定めなければなりません。
株式会社の定款で必須の項目 | 詳細 |
目的 | ・「目的」として、会社が行う事業を列挙する ・1つに絞る必要はなく、今後行うつもりの事業を挙げていく ただし「目的」は登記簿にも記され、融資の際などには確認されることがあるため、とにかく多く記載すれば良いというものでもない ・いくつか列挙し、最終の号にて、「各号に関連する一切の事業」などとの文言を入れれば多少の事業分野拡大にもそのままの定款で対応できる |
商号 | ・「商号」は社名にあたるもの ・「株式会社」の文言を入れる必要がある(挿入場所は問われない) ・商号として用いることができる文字、記号は法務省のWebページ(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji44.html)を参照 |
本店の所在地 | ・少なくとも最小行政区画である市町村(または東京23区)まで記載する |
設立に際して出資される財産の価額又はその最低額 | ・設立時の出資価額等に関連して、資本金額や発行株式数、発行可能株式総数も記載するケースが多い ・1株あたりの価格は「1万円」や「5万円」が多い |
発起人の氏名又は名称及び住所 | ・附則にて、発起人の引受株数と一緒に記載するケースが多い |
これら以外にも色々と記載することが多いですし、各項目の決定には法的な視点も必要です。そのため発起人自身が書籍等を参考に検討していくのも重要ですが、専門家に作成を依頼したほうが安心でしょう。資本金額などは直接的に税務に関わってきますし、定款は設立後の融資等にも影響を与え得るものですので、この観点からは税理士への依頼が重要です。
合同会社設立時の定款作成の流れ
株式会社ほどではありませんが、「合同会社」も選択される例が多いです。大きな資金調達・大規模な事業拡大を予定していないのであれば、合同会社のほうが向いていることもあります。
以下でこの合同会社について、設立時の定款作成の流れを見ていきましょう。
合同会社設立の大まかな流れ
1. 会社の基本事項を決める
2. 定款を作成する
3. 印章を注文する
4. 出資金の払い込み
5. 設立登記申請
合同会社でも、株式会社の設立と共通している点は多いです。
大きな違いとしては「定款認証が不要」であることが挙げられます。
合同会社の定款で必ず記載する項目
合同会社の設立において必須なのは以下6つの項目です。
合同会社の定款で必須の項目 | 詳細 |
目的 | (株式会社と同様) |
商号 | ・「合同会社」の文言を入れる必要がある |
本店の所在地 | (株式会社と同様) |
社員の氏名又は名称及び住所 | ・1つの条項としてまとめられるケースも多い ・有限責任社員である旨の記載により、合同会社として成り立つ |
社員が有限責任社員であること | |
社員の出資の目的及びその価額 | |
又は評価の標準 | ・出資する金銭等の価額を記載 |
合同会社の場合、設立の手続きが株式会社より簡素で、費用もそれほどかかりません。 しかしながら、定款の作成については、複数人で設立する場合特に慎重になるべきです。 議決権や利益の分配など、定款で定めた内容は原則社員全員の同意が必要で、容易に後から変更することができないからです。
どのように定めるべきか、リスクを最小限に留めるにはどうすべきか、よく考えて各項目を設定していきましょう。
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資格者紹介
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父親が会社経営をしていて、子どもの頃から将来は自分で起業し、自分の思うような人生を自分で切り拓いて生きていきたい、と考えていました。
父親の背中をずっと見てきましたので、経営者の思いや悩み、苦労などにも傍で触れることができました。
そして大学時代に出会った税理士という資格は、中小企業の最も身近なパートナーであることに非常に魅力を感じ、税理士を目指そうと決意しました。
大学卒業後、仕事をしながらの受験生活は長丁場となりましたが、無事に税理士試験に合格。
実際に自分が税理士として仕事をしていて感じることは、税理士の仕事はとてもやり甲斐があり、責任も重大であるということです。
ただし、税理士の使命は「正しい経理処理や税金計算をして、間違いのない申告書を作る」だけではありません。
専門家としての事務的なサービスにとどまらず、経営者が誰にも言えないような悩みを抱えた時に、真っ先に弊所のことを思い出して頂き、気兼ねなくご相談できるように心掛けています。
そして、経営者の思いに本気で応え、共に問題解決をしていきます。
そのため、経営者とのコミュニケーションを積み重ねにより、本物の信頼関係を構築することは重要です。
さらに「スピード対応」を常に心掛け、経営者が事業に専念できるよう、万全のサポートをさせて頂きます。
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- 所属団体
- 東京税理士会
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- 著書
- あさ出版「中小企業の資金調達方法がわかる本」(共著)
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- 経歴
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大学を卒業後、3年間の受験専念期間を経て、一般企業に営業職として入社。
その後、会計事務所に入所し、キャリアを積む。
2011年、税理士試験合格。翌2012年、税理士登録。
「より主体的に、責任を持って業務に取り組んでいきたい」と考え、2013年独立。
森下税理士事務所を開設する。
事務所概要
Office Overview