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個人事業主が節税対策をする際の注意点とは

適法な範囲で税金の支払額を低く抑えることのできる節税対策は、事業を運営する上で非常に有効的と言えます。しかし誤った節税対策は、脱税行為となってしまったり、事業運営に問題が起こったり、様々なリスクもあることを知っておく必要があります。

そこでここでは、個人事業主が行う所得税の節税対策における注意点を紹介します。

 

青色申告するためには書類の提出が必要

個人事業主の節税対策として最も一般的とも言えるのが「青色申告」をすることです。青色申告によって、複式簿記に基づいて日々の記帳を行い、所得の計算をより正確に行うことで税務上の優遇措置を受けられます。

例えば、青色申告によって「青色申告特別控除」を最大65万円得ることができます。他にも、事業主の家族や親族が事業に従事する場合、「専従者給与」として給与の支払額を計上できます。このように、特別控除や専従者給与は大きな節税対策となります。

 

しかし、ここで注意したいのが、必要書類を提出しなければならないということです。青色申告を行うためには、「所得税の青色申告承認申請書」を税務署へ提出する必要があります。

 

また、申告しようとする年の315日までに提出、もしくは新たに開業した場合は開業日から2ヶ月以内に提出しなければならないと定められています。期限があるという点にも留意しないといけません。

 

さらに前述した専従者給与を計上するためには、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する必要もあります。これについても、承認申請書同様に、経費計上しようとする年の315日まで、もしくは専従者が従事することになった日から2ヶ月以内と定められています。

このように、すぐに控除を受けられたり、給与を計上できたりするわけではありません。前もって必要書類を用意し、提出しなければならない点に注意しましょう。

 

経費に計上できるのは事業用部分のみ

売上から経費を差し引いた金額が利益となります。経費を多く計上すると利益が少なくなり、納める税金を減らすことができます。よって、経費をできるだけ多く計上するのが節税の基本とも言えます。

しかし、支払った支出の全てを経費として計上できるわけではありません。経費として計上できるのか、できないのかの判断を適切に行うことが重要です。

 

重要なのは、「事業のための支出であるかどうか」です。

自宅を事務所として兼用している場合、家賃の全額は経費にできません。支払った家賃を事業用とプライベート用で按分して、事業用の部分のみを経費に計上します。この場合の按分方法としては、床面積の割合で計算するのが一般的です。

 

家賃の他にも、インターネット代や電話代などの通信費、水道代や電気代などの水道光熱費も同様に、適切な計算方法によって按分し、事業用部分のみを計上しましょう。

 

このように、プライベートにかかる部分については、経費にならないことを注意してください。税務調査が入った時に、按分に使用した計算方法の根拠をしっかりと答えられるようにしておくことも重要なポイントです。

 

経費の使い過ぎはキャッシュフローの悪化に繋がる

経費にできるものはできるだけ多く計上し、利益を少なくすることが節税の基本であると前項で触れました。しかし、利益を抑えたいからといって、経費を使い過ぎてしまうと、その分支出が増えてキャッシュフローを悪化させてしまいます。つまり、手元の現金および預金が少なくなり、事業を継続させる上で十分な運転資金が足りなくなってしまうことが考えられます。

 

また、確定申告前に、大量に消耗品を購入したり、高額の備品を購入したりするケースもありますが、結果的に税金の負担が軽くなったとしても必要のないものを購入してしまっては本末転倒です。

そのため、過剰に経費を計上しようと何かを購入するのではなく、本当に必要なものを購入した際に、漏れのないよう注意して経費計上するという意識が大切です。

 

少額減価償却資産の特例

減価償却資産を購入した場合、通常は、資産計上した上でその後、減価償却費として費用にしていくというのが一般的な方法です。

ただし、30万円未満の資産であれば、全額をその年に費用計上できる制度があり、これは節税対策としてよく使われます。例えば、大きな利益が出そうな年には、年度末にパソコンやプリンターなどを購入して一括費用計上するといったケースです。

 

これを「少額減価償却資産の特例」と言います。もちろん合法的な方法であり、大きな節税効果が期待できる方法と言えますが、注意しなければならない点もあります。

まず、この特例を受けられるのは、青色申告を行う方のみであるという点です。白色申告の場合は対象外となります。白色申告をしていて、この特例を受けたい場合には前述した青色申告の申請が必要になります。

 

また、少額減価償却資産として計上できるのは、年間300万円までという上限が設定されていることにも注意が必要です。300万円を超える部分については、30万円未満の資産であっても全額を費用計上できません。通常通りの方法で、耐用年数に応じて減価償却していきましょう。

 

経費になる税金とならない税金がある

税金は、経費にできるものとできないものがあります。

 

経費にできる税金以下です。

 

  • 個人事業税
  • 消費税
  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 固定資産税
  • 自動車税

 

例えば、契約書に貼り付ける収入印紙(印紙税)や、登記にかかる費用(登録免許税)などが該当します。なお、これらは全て「租税公課」の勘定科目で仕訳します。

 

また、固定資産税や自動車税については、所有する建物や車が、事業とプライベート共用の資産の場合、使用割合に応じて、事業用の部分のみを計上します。

 

一方で経費にできない税金は以下です。

 

  • 所得税
  • 住民税
  • 贈与税
  • 相続税
  • 延滞税
  • 加算税

 

所得税や住民税などは、事業に関係なく納付する義務があることから、経費としては認められません。また、納付期限を過ぎてしまったことで発生する延滞税や加算税についても、罰金としての意味合いであるため、当然経費にはできません。

そのため、印紙税や固定資産税などの「租税公課」として経費計上できる税金と混同して計上してしまわないように注意をしてください。

 

なお、国民健康保険や生命保険、損害保険などの保険料全般も経費にできません。しかし、保険料については、控除できるものがあります。経費としてではなく、控除に記入しましょう。

このように、税金についても、計上できるか否かを適切な判断が求められます。

 

以上のように、節税対策として行った様々な行為によって脱税と判断されてしまう可能性があることを十分に注意する必要があります。そのためここで解説した点をしっかりと意識しながら、節税対策を行うようにしましょう。

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資格者紹介

Staff

森下敦史税理士
税理士 森下 敦史 もりした あつし

父親が会社経営をしていて、子どもの頃から将来は自分で起業し、自分の思うような人生を自分で切り拓いて生きていきたい、と考えていました。

父親の背中をずっと見てきましたので、経営者の思いや悩み、苦労などにも傍で触れることができました。

そして大学時代に出会った税理士という資格は、中小企業の最も身近なパートナーであることに非常に魅力を感じ、税理士を目指そうと決意しました。
大学卒業後、仕事をしながらの受験生活は長丁場となりましたが、無事に税理士試験に合格。

実際に自分が税理士として仕事をしていて感じることは、税理士の仕事はとてもやり甲斐があり、責任も重大であるということです。

ただし、税理士の使命は「正しい経理処理や税金計算をして、間違いのない申告書を作る」だけではありません。

専門家としての事務的なサービスにとどまらず、経営者が誰にも言えないような悩みを抱えた時に、真っ先に弊所のことを思い出して頂き、気兼ねなくご相談できるように心掛けています。
そして、経営者の思いに本気で応え、共に問題解決をしていきます。

そのため、経営者とのコミュニケーションを積み重ねにより、本物の信頼関係を構築することは重要です。
さらに「スピード対応」を常に心掛け、経営者が事業に専念できるよう、万全のサポートをさせて頂きます。

  • 所属団体
    東京税理士会
  • 著書
    あさ出版「中小企業の資金調達方法がわかる本」(共著)
  • 経歴

    大学を卒業後、3年間の受験専念期間を経て、一般企業に営業職として入社。

    その後、会計事務所に入所し、キャリアを積む。

    2011年、税理士試験合格。翌2012年、税理士登録。

    「より主体的に、責任を持って業務に取り組んでいきたい」と考え、2013年独立。

    森下税理士事務所を開設する。

事務所概要

Office Overview

事務所名 森下敦史税理士事務所
代表者 森下敦史(もりした あつし) [ 税理士番号:121051 ]
所在地 〒104-0061 東京都中央区銀座1-24-3 銀座マスキービル5F
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